第四話「尽きぬ米袋」

第四話「尽きぬ米袋」

今は昔、越前 (えちぜん) (今の福井県の東) の国に、生江世経 (いくえのよつね) という人がいました。貧 (まず) しくて食べるにも事欠 (ことか) く日々でしたので、福徳 (ふくとく) を与えて下さるという吉祥天如 (きっしょうてんにょ) に、

「空腹 (くうふく) でたまりません。どうかお助け下さい」

と祈 (いの) っていました。あるとき人が、門前にきれいな女性 (じょせい) が来て、この家の主人に会いたいといっていると教えてくれました。いぶかしく思って出てみると、まことに美しく気品のある女性が、土器 (かわらけ) に御飯 (ごはん) を盛 (も) って、

「おながかすいているといいましたね。これをおあがりなさい」

と与 (あた) えてくれました。世経は喜んでそれを頂 (いただ) き、家の中へ持ってはいって、まず少し食べてみると、おいしい上に、すぐ満腹 (まんぷく) という状態 (じょうたい) 。二、三日たってもおなかが空 (す) きません。そこでこの御飯を大事に取っておき、少しずつ食べていましたが、さすがに日を経 (へ) てなくなってしまいました。

(どうしよう) と思って、またもや吉祥天如を念ずると、再び門前にさきの美女があらわれ、

「そなたを可哀想 (かわいそう) に思うのだけれど、いつもいつも御飯を大事に持ってきてあげるわけにいかないわ、今度は命令書をあげましょう」

と書付を下さいました。世経がひらいてみると、「米三斗」とあります。世経はいいました。

「これはどこへ参って頂けばよろしいのでしょう」

「ここから北へ峰 (みね) を越 (こ) えてゆくと、ひときわ高い峰があります。そこへいって、『修陀、修陀 (しゅだ、しゅだ) 』と呼 (よ) ぶと、出てくる者があります。その者に米をもらいなさい」

世経は早速 (さっそく) 、教えられた通り、高い峰に登って、「修陀、修陀」と呼ばわります。すると、

「おおう…」

と恐 (おそ) ろしげな声がして、出てきた者の姿 (すがた) …あっと世経はおどろき、がたがたと震 (ふる) えました。額 (ひたい) に一本の角 (つの) が生え、目はぎょろりとするどく、赤いふんどしをしめた鬼 (おに) だったのです。

怖 (こわ) くてたまりませんが、世経は強 (し) いてがまんして命令書を見せますと、鬼はそれを手に取り、

「命令はきいています。ただし、ここには三斗とありますが、ご主人さまは一斗をあげるように、とのことでした」

と恐ろしげな姿ながら、仕事には律儀 (りちぎ) な鬼らしく、袋 (ふくろ) に一斗の米を入れてくれました。

世経は袋を頂いて帰り、毎日のようにそこから米を取りましたが、何というふしぎ、袋の米はあとからあとから湧 (わ) いてきて一斗の米がいつまでもなくなりません。世経は次第に裕福 (ゆうふく) になりました。

これを聞いた国守 (くにのかみ) 、その袋を百石 (こく) で売れ、と世経に命じます。国守のいうことに背 (そむ) けず、世経は仕方なく渡 (わた) しました。国守は喜んでその袋から米を取り出しましたが、百石を取り終ると、もう袋から米は出て来ません。国守はくやしがりましたが、しかたなく、世経に返しました。世経が袋の米をとり出すと、米はまたもや尽 (つ) きることなく、あふれ出ました。

まごころこめて、仏さま・天界の神々を信じ、祈る人々には、こんなありがたいご利益 (りやく) もあるのだと人々は語り伝えたそうですよ。

第三話「藁しべ長者」

第五話「蛇酒」