世界で広がりをみせる「冬期湛水農法」で200年の伝統を誇るスペイン・バレンシアの田んぼ

スペイン・バレンシア

日本をはじめ世界各国から注目されているのが「冬期湛水農法 (とうきたんすいのうほう) 」という方法です。スペインの米どころ・バレンシアでは、塩害をふせぐために、今から200年ほど前からこの方法がとり入れられてきました。

また、みなさんがよく知っているスペイン料理のパエリアはこの地から広がったとされています。

バレンシアの農家の方のお話を中心に、冬期湛水農法や食文化、そして「日本と似ている」と言われているバレンシアの農家の気持ちなどをレポートします。

「乾田馬耕 (かんでんばこう) 」

日本では、明治時代の中ごろまでは、一年中水をためている田がほとんどでしたが、その後、「乾田馬耕」というものが広がります。乾田とは、秋に田んぼから水をだすことです。馬耕とは、牛や馬を使って深くたがやして、土をかわかし、ひ料分を増やして、とれ高をアップさせることです。

乾田馬耕

しかし、1684年に書かれた会津藩 (あいずはん=今の福島県) の「会津農書」では「田冬水 (たふゆみず) 」がしょうかいされています。冬の田んぼに水をたたえると「川ごみが発こうして良い」とあり、冬期湛水農法がすすめられています。

スペインきっての米どころ・バレンシア

スペインは日本から約1万キロメートルはなれた所にあります。国の広さは日本の約1.3倍もあります。主な農産物はぶどう、オリーブ、かんきつ類などで、米の生産量は約90万トンです。

スペインきっての米どころであり、パエリアがうまれたとされるバレンシアでは、お米に対して特別な思いがあるようです。バレンシアの農家ホセ・ルイス・マトセス・ガルシアさんに、バレンシアの米作りについてお聞きしました。

ガルシア「この村は、ほとんどが稲作 (いなさく) 農家です。私自身も12歳のときから60年間、米を作っています。米作りは、楽しいですね。ここは、一年を通じて天候もおだやかで、米作りには最てきな地いきです」 地中海性気候で温だんなバレンシアは、スペインの首都マドリッドから近いビーチリゾートになっていて、夏は午後10時ごろまで明るいようです。

ホセ・ルイス・マトセス・ガルシアさん

200年前に塩害対策として冬期湛水農法を導入 (どうにゅう)

  • ガルシアさんの田んぼ
  • 水口

これは、ガルシアさんの田んぼです。広い田んぼに水が入れられており、湖のように見えますね。水中をのぞいてみると、水口 (=水の出入り口) が見えています。

  • 農業用の小屋
  • 乾いた田んぼ

これは、農業用の小やです。まるで、湖に浮んでいるようですね。水を入れていない、かわいた田んぼもありました。これは水不足のために、水を入れることができないことによるそうです。

ガルシア「順番に水を入れて、どの田んぼも湛水します。水門の開け閉めでコントロールして、順番に水を入れます。水がないと、塩が上がってきます」

  • アルブフェラ湖から東へ約2km程で地中海です。
  • アルブフェラ湖と地中海を結ぶ水路

200年前、ここに冬期湛水農法がとり入れられたきっかけは、塩害対さくでした。バレンシアは地中海えん岸で、水源地 (すいげんち) となっているアルブフェラ湖にも海水が入ることがあります。昔、田をかわかせていたころ、地下にたまっていた塩分が土の上に出てきて、作物が育たなくなったので、これをふせぐために水を入れることになったと伝えられています。

右の写真はアルブフェラ湖と地中海を結ぶ水路で、水門で遮断 (しゃだん) されています。

  • モーター1
  • モーター2

田んぼへの水の出し入れは、この小屋にあるモーターでもコントロールできます。

ガルシア「1月には水をぬき、5月になるとまた水を入れます。夏場は水が不足するため、水門にかぎをかけます」

水門

水門には、水の量を調節するための目もりとなるあなが開けられています。

  • この寺院のとびらの前で水さいばんが開かれます。
  • 水がめを持った天使のぞうが、とびらの上部にほられています。

バレンシアには、毎週木曜日に、この寺院のとびらの前で水さいばんが開かれるという伝統 (でんとう) 行事が残っています。1,000年間続いている行事で、ユネスコの無形文化遺産 (いさん) となっています。

  • 農業機械置場と倉庫1
  • 農業機械置場と倉庫2

ここはガルシアさんの農業機械置場と倉庫がある場所です。写真の右側の方がガルシアさんの弟のフランシスコ・マトセス・ガルシアさんです。

  • 倉庫
  • 乾燥中の籾

この写真の倉庫で、もみをかんそうさせているそうです。この倉庫には約800トンものお米があります。

ガルシア「ここからせい米所に持って行き、せい米し、ふくろづめしてて出荷します」

ガルシアさんに、好きな米料理をお聞きすると、やっぱり「それは、パエリアです」とのことでしたよ。

  • アルブフェラ湖
  • アルブフェラ湖

ここが水源地のアルブフェラ湖です。スペイン最大の湖で、アルブフェラとはアラビア語で「小さな海」という意味だそうです。かんがい用水路に水門が作られていました。水鳥が集まる、バードウオッチングの名所でもあるそうです。

  • 国立公園に指定

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