夢を捨てない久米島農業人に神が味方したカンジンダム

棚田の水質浄化機能

ホタル館

(左端) 佐藤直美 (Sato Naomi)
久米島ホタルの会事務局長
(左から2人目) 佐藤文保 (Sato Humiyasu)
久米島ホタル館館長

カンジンダムは久米島町、久米島町具志川土地改良区、久米島ホタルの会の三者が連携して管理しています。カンジンダムでは、沖縄県指定天然記念物となっているクメジマホタルや陸生ホタルなど希少種の生き物が生息しています。久米島ホタル館館長の佐藤文保さんと、久米島ホタルの会事務局長の佐藤直美さんのご夫妻にお話をお伺いしました。

カンジンダムが完成する以前に、既存の地下ダムでは、富栄養化の問題が発生していました。南部農林土木事務所から相談を受けた佐藤文保さんが、棚田を作ることを提案しました。

佐藤文保「私たちは棚田という方式でカンジンダムを守ります。ある地下ダムでは生活排水による富栄養化が進み、ホテイアオイが大繁殖して、除去するのに年間、数千万円かかっていたんです。その二の舞になることを危惧しました。その費用が発生すると、久米島町の負担になりますから」

カンジンダムに吊り橋を掛けて、ボートを浮かべて観光の起爆剤にしようという話がありました。しかし、富栄養化の問題を予見した佐藤文保さんが声を上げました。吊り橋、ボートの代わりに棚田を作ってほしいと。意見は対立しましたが、結果、沖縄県は水を守る道を選びました。南部農林土木事務所が棚田ゾーンを作り、水路を引きました。ただ、水質浄化のソフト面のメンテナンスは佐藤さんご夫妻を中心に、ボランティアで行うことになりました。

佐藤直美「沖縄県が棚田ゾーンを設定してくださって、田んぼは私たちが一から作っています。原っぱの石を取り除くことから始めて、水が漏れないように何度も足で土を踏んで」

  • 棚田ゾーン
  • 案内看板

久米島ホタルの会による多面的機能の活用

久米島ホタルの会は、自然を愛する人のための会で、大人の会員が24名、子どもの会員が23名です。カンジンダムの棚田作り、水路の管理に加えて、久米島の生物多様性を再生するためのさまざまな取り組みを行っています。活動の成果の一つとして、ホタル館の川には、クメジマホタルが4年前に戻って来たそうです。

佐藤直美「ホタルは環境指標生物です。昔、五枝の松にホタルがたくさん集まり、クリスマス・ツリーのように点滅していた時代があったそうなんです。水環境や自然環境が甦ると、ホタルが戻って来る。ホタルの棲める川は、豊かなサンゴの海へとつながります。その島の自然環境を島の人のためにも、もう一度、取り戻したいんです」

  • 樹齢約250年の五枝の松
  • ホタル看板

佐藤直美「ハッピー・エコ・リュクス活動 (環境にやさしい贅沢) のバスターフィッシングでは、ブルーギルやテラピアなどの外来種を釣って駆除します。でも、命のありがたみも実感してもらおうということで、 ちゃんと料理して、天ぷらにして食べます。食育にもなります」

このバスターフィッシングには、南部農林土木事務所の川辺貢さんも参加しましたが「釣りの成果については、子どもたちにはかないませんでした (笑) 」とのことでした。

  • 子供たち
  • 橋

佐藤直美「リバーウォッチングでは、久米島にある6校の小学校の5、6年生全員が関わって、年に1度、環境調査、生態系の勉強をします。より清い環境にいる生き物や植物が増えると、農業用水も自然に浄化していきます。多様な生態系を保全し、維持していく自然との関わり方は、農業や水産業にも生かされることでしょう」

久米島ホタルの会は、平成20年度に「沖縄ふるさと百選」で表彰されています。また、カンジンダムの貯水池は農林水産省の「ため池100選」に選定されています。

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