稲作限界標高1,000メートルでの挑戦を支える白樺湖の美しい素顔

昔の知恵の米づくりが口コミで広がる

  • 外で3ショット
  • 水をさわる

磯司「昔の人のやり方で、やっています。糖分がしっかりと溜まって、籾が太ったところで青いまま刈り取りをして、それを今度はハザに架けて、天日で干します。風と太陽の光で乾燥させます。ハザに架けると穂が下になるから、上の木の栄養分が全部、穂に行って、溜まる。まだ、生きていますからね。稲穂がそれをもらって、もっと実る。やっぱりね、おいしいですよ」

外でしゃがむ

磯司「口コミで『お米売ってくんない』っていう方が来るんですけれど、じゃあ食べてみてよって言って」

中村「食べると、分かる人は分かる。ラベルで食べる人もいますけれどね」

清幸「一番よく分かるのは、子どもさんにあげると、磯司さんのお米だったらおかわりをする」

磯司「それで、『本当に旨えわ、またくれ』って言うから、うちの食べる分がなくなるから、今年はこれだけにしてくださいって。一袋増え、二袋増えって、増えていく。ということは、他の人も食べているということですよね。『おれの分も買ってきてくれ』と。昔の人のやり方は、えらいものだなと思うんですよ」

枯れ葉

磯司さんの田んぼは、害虫にやられていました。 磯司「ベロムシ (イネドロオイムシ) だらけ。稲の葉っぱを食べるから、葉っぱが白くなるんですよ、農薬を使わないから」」

磯司さんの田んぼには猫もいました。 磯司「じっと構えてさ、カエルとりをしているんですよ (笑) 」

田んぼ猫

「あっただけ儲け」

  • 雑草の花
  • 立ち姿

清幸さんの田んぼは雑草だらけで、雑草の花まで咲いていました。

清幸「こだわっているので、放ったらかしてあります」

中村「い草って言って、畳表になる草ですね。除草剤をざっとまけば消えますよ。消えるんだけれど、農薬を使いたくないんですよね」

清幸「自分の米は、消毒でも何でも少なくして。収量は多くなくていいから、いい米をつくりたいと思ってやっています」

磯司「なるべく肥料も少なくして。多収穫にすると、やっぱり食味は落ちるわけですよ」

中村「米って正直なもので、肥料をたくさんやると収量って上がるんですよね。それなりに」

磯司「一つの田んぼのなかでも、本数を少なくして、お米の木がゆうゆうと育ったっていう感じにするとね、いい米がとれます」

清幸「本当にその通り。自分は、とにかく、“あっただけ儲け”、というつくり方をやっているんです」

磯司「こっちの人の田んぼなんかきれい」

  • 雑草1
  • 雑草2

お隣の田んぼには雑草がなく、株間には水が見えていますが、清幸さんの田んぼの株間は、雑草に埋め尽くされています。

「これからの時代にぴったり合うんじゃないかと思います」

磯司「コーヒー飲んでいきます? 湧水のコーヒー。清幸さんはいつも来るので、マイカップがあるんです (笑) 」

  • ストーブ
  • コーヒー

南アルプスの湧水のコーヒーをいただきました。 (おいしかったです。ごちそうさまでした。)

磯司「収量をとろうと思ったら、いくらでもできますよ。私たちは収量は追っていません。六十五歳を過ぎると、体が衰えてくるから、その分病院でおかねを使ったら同じですから (笑) 。 (収量を上げて) おかねをもらうより、自分の体に合った仕事をして、ここの高原のいい空気を吸って、太陽の光を浴びて、四季折々の生活をするほうがいい。いま、食料の形が変わってきていますよね。パン食とか、太るから食べないとか。若い方たちが、農業で生計をたてていきにくくなっている。私の息子も、外に働きに出ています。これからは付加価値米がいいと思います。清幸さんと私がつくっているようなやり方が、時代にぴったり合うんじゃないかと思います」

清幸さんは、にこにこしながら頷いていました。

  • コーヒー2ショット
  • コーヒーと猫

磯司「肥料で大きくしないで、穂がちょうどいい高さに実って、南アルプスといっしょに穂の垂れ具合を眺めて、ああ、お前たちよくきれいに実ってくれたなあ、ああ、これは美味い米ができるって」

中村「手塩にかけて」

磯司「精白するとね、本当に透き通ったきれいな水晶みたいな米になりますよ。そこまでやってみて、ああ、自分の米、うまくとれたなって」

戦後の食糧不足の時代に、白樺湖 (蓼科大池) 築造により収量増大を果たしたこの地にあって、いま「南アルプスといっしょに穂の垂れ具合を眺めて」と、詩人の心でお米を慈しむ磯司さん。「 (雑草も) こだわっているので、放ったらかしてあります」、収量についても、にこにこしながら「あっただけ儲け」と考える清幸さん。かつて「水口立ち」を克服したこの地で、温水溜め池に守られて、「時代にぴったり合う」米づくりへの挑戦が始まっています。

湖と山の原風景

(2014年7月16日※皆様の肩書きは2014年7月16日現在のものです。 文責:くぼたのたんぼ管理人)

水の道をめぐる旅 TOP

大正13年、泥炭地に打ち込まれたツルハシの力。国づくりを支えた北海幹線用水路