稲作2000年の地の心が守る 宇和町の水と風景

観音様がくださった水

水不足で悩んできた宇和町。しかし、一カ所だけ、その例外と言える水があります。それが戦国時代に、水不足のこの地に観音さまがくださったと伝えられる「観音水」です。観音水は宇和町明間にある、名水百選に選定されている自然の湧き水です。この観音水で米作りをしている農家の松末勝己さんにお話をお伺いしました。

  • 観音水1
  • 観音水2

松末「観音水は飲んでもおいしくて、水汲みに、どんどん人が来るんです。松山のほうから、わざわざ水汲みに来る人もおられます。夏の暑いときは老人クラブが『流しそうめん』をやっておりますよ (笑) 」

松末勝己

松末勝己 (Matsusue Katsumi)
農業
農業協同組合に勤務し、定年退職後、先祖伝来の田んぼを受け継いで米作りを始め、いまでは三十年のベテラン。

松末「勤めているときは父が田んぼをやっておりました。私もずっと手伝っておりましたので、自分でやるようになってからも、迷わずに出来たということです。農協に勤め、農業の販売関係とかをやっていたので、その経験がいまは非常に役に立っております」

松末さんが観音水の水源に案内してくださいました。

松末「この水はいつから出たのか、本当のところは誰にも分かりません。穴があってですな、そこから自然にどんどん出とるんですよ。山から湧いているんですが、愛大 (あいだい=愛媛大学) の先生が大学生を何人か連れて調査をやったんですけれど、どこから来とるかわからないんですよ。水が、この穴の左側3メートルほどの位置の下から吹き出とるんです。中には、誰も入れないんですよ」

  • 湧き水1
  • 湧き水2
  • 湧き水3
  • 湧き水4

松末「地域の方20人前後が山の水利権を持っておるんですが、一部を県が買い取って、こうして皆さんに使っていただいています」

第二観音水

観光地としてにぎわう観音水は、地域では「第一観音水」と呼ばれており、実はもう一カ所「第二観音水」と呼ばれる水源地があります。松末さんが米作りに利用しているのは、この「第二観音水」のほうでした。こちらの水源地にも案内していただきました。

  • 第二観音水への登り口
  • 歩く
  • 水路
  • 水路の手入れをする松末さん

松末「ここの水が、私たちが生活用水や水道に利用している水です」

第二観音水水源地
  • 第二観音水水源地
  • 第二観音水水源地2

観音水の米

松末「米作りにとってここは、条件がいいんですよ。穴から出とる水が一年を通して常に14度です。私の田んぼは棚田であって、場所としてはそんなにいいところでもないんじゃけど、夏場に水が冷たいのは作物には最高なんですよ。寒暖の差のある、そういう状態で作ると、大変おいしいものが出来ます。それに、観音水には不純物がなくて、きれいなんですね。私らは昔からこの地で米を作って食べておりますから、普通の米じゃと思うんですが、初めての方が食べたら『ああ、うまいなあ、ええなあ』と言われるんです」

松末

松末「今年のように、田植え時期に低温の場合は、どのように水をかけるか、高温の場合はどのような対応をするか、常に頭に入れてやっていかなければならない。水が一番ですよ。水を上手にですね、田んぼにかけてやれば、稲の出来映えも違うんです」

罠

これはイノシシを生け捕るための罠です。

松末「イノシシは去年はだいぶおりました。若い人で猟銃の免許取る人が少なくなったので、ああいうのは増えよるでしょうな。被害が太う (大きく) なるでしょう。収穫間際でごっそりやられますからな」

お話をお伺いした日は、稲刈りのシーズン真っ盛りでした。倒伏している稲も見られましたが、風のせいではないそうです。
松末「倒れているのは、米の重みのためですよ。米があまり出来てないとこは、稲がぴんと立って、逆に収量がないということです。コンバインでどんどん走ってもですね、いつまで走ってもタンクに一つも籾がいっぱいにならんという (笑) 。稲が出来とるやつは、少し走っただけで、早くももう「ピッピッピッピッ (タンクが籾で満たされたときのアラーム音) 」と、満杯になりましたあ、ってすぐ言うぐらいです」

コンバイン1
  • コンバイン2
  • トラック

松末「農業、好きですから。私はもう、好きなことをやるのが一番じゃと思うて、誰が言うてもブレーキのきかん、そういう状態で、徹底してやっております。婆さんと二人でごそごそと、お蔭で何とか体が動きますから。とにかく元気におるのが一番じゃと私は思いますら。ごはんを食わにゃあいけん。食べることが一番大事ですな。面白いです、米作りは (大笑) 。指導者がいいですけんな。長いつきあいになりますけんな、この松原さんは、ほんと、週に何回も私の田まで来られて『どうずら?』と声をかけてもらうし。やっぱりうれしいですら (笑) 」

松末さんがつくった新米をいただき、「おいしかったですよ。カルシウムがよう効いちょりますよ」とお礼をのべる松原弘幸さん (株式会社四国クボタ宇和営業所)

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