神と自然との調和として世界文化遺産に登録されたバリ島の田んぼと水利組織・スバック

水利組織・スバック

スバック

スバックはバリ島で900年以上続く水利組織です。一つのスバックは10~800ヘクタール程度の水田を受益地として、公平な水の配分を行っています。バリ島にはこのスバックが1,400以上あり、農家はときには複数のスバックに加入して米作りを行っています。

ここでは、世界遺産に登録されているジャティルウィの棚田を管理するスバックを紹介します。

スバック長

案内してくださったのはこの地のスバック長であるイ・ニョマン・クドゥス (I nyoman kudus) さんです。稲作の時期を決定し、水を配分します。また、祭祀を主催し、紛争を解決します。

バトゥカル山から湧き出る水をこの井堰 (いせき=水を他へ引いたり流量を調節したりするため、川水をせきとめる場所) に溜めることができます。水門の開け閉めにより、田んぼに流す水量を調節します。

井堰1
  • 井堰2
  • 井堰3

クドゥス「ジャティルウィ地域は、スバックのコンテストでNo.1となりました。田んぼがきれいで、ネズミもバッタも少ないところが評価されました。ですから、この井堰も国がちゃんと整備してくれる予定です」

スバック・コンテストは、バリ島のスバックの有用性に着目するインドネシア政府が実施しています。ジャティルウィは、「本当に美しい」という意味だそうです。

  • 小屋1
  • 小屋2

この小屋は、夜間に水の見張りをするガードマンが駐在する小屋です。

クドゥス「水に困っていないのに見張るのは、それがスバックのルールだからです。スバックのルールがなければ、絶対に水は無くなり、困ったことになります。だから見張ります。この小屋も、国に新しくしてもらえます」

また、輪番配水システムを実施しています。米作りでは、田植えの前後に大量の水を必要としますが、その後は必要量は減少します。植え付け時期をずらして、水を順番に割り当てることにより、全体として効率の良い米作りを実施しています。

  • 水門1
  • 水門2

井堰から水路を通って、水は棚田に流れ込みます。棚田の中にも水門が設置されています。

分水

ここは分水する場所です。右が一人の田んぼ、真ん中が四人の田んぼ、左が八人の田んぼに行く水路の入口だそうです。人数に合わせて公平に取入口の幅が設定されています。

薪を頭にのせて運んでいる方にお会いしました。薪も棚田から調達しているようです。

薪

神様のお風呂

  • 神様1
  • 神様2

田んぼの神様は女性でデロウマン、水の神様は男性でベタラガンガ、稲の神様が女性でデウィスリーです。田んぼの神様と水の神様が結婚して稲の神様が生まれたそうです。

クドゥス「バリ島には神様がたくさんいます。バリでは皆、信じていますよ」

沐浴1

ここは、神様が沐浴する場所だそうです。

  • 沐浴2
  • 沐浴3

観光客はもちろん、バリ島の方でも部外者は立ち入れないそうです。イ・ニョマン・クドゥスさんが特別に案内してくださいました。

神様のお風呂

クドゥス「これが神様のお風呂です」

彫像や植物が美しく配置され、掃除が行き届いていました。この場所で、ジャティルウィのスバックの祭りが定期的に行われます。

  • 神様の水1
  • 神様の水2

クドゥス「これは神様の水なので、飲んでも大丈夫ですよ」

スバック長として

ジャティルウィのスバックのメンバーは約900人だそうです。

通常、スバック長は収穫の数パーセントを受け取れるそうです。しかし、イ・ニョマン・クドゥスさんは報酬をもらっていないそうです。引き受けている理由は「スバックの仕事が好きなことと、お祭りも楽しい」からだそうです。

クドゥス「報酬はなしですが、水をいっぱいもらえます。誰かが、唐辛子やトウモロコシを作ったりするために追加の水が欲しいという場合は、水代をもらいます。六ヶ月で10万ルピア (約1,000円) です。それが55人ぐらいいます」

スバック長として一番困るのは、ルールを守らない人が出た場合です。スバックには「アウィグ・アウィグ」という法典があります。稲作のスケジュール、構成員間の紛争の解決、宗教儀式への参加などについて規定しています。村の緑化や清潔を保つなど、環境に配慮した項目もあるそうです。また、「ゴトン・ロヨン」という、日本農村の「結 (ゆい=助け合いの組織) 」に類似した相互扶助の組織があります。田植えに協力することや、用水路の管理、草刈りなどに参加する義務があります。

沐浴1

ジャティルウィの棚田は、観光地にもなっています。入場料は一人5,000ルピア (約50円) です。この収入は、灌漑施設の維持管理に使用されます。

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