神と自然との調和として世界文化遺産に登録されたバリ島の田んぼと水利組織・スバック

世界文化遺産に登録

  • スバック博物館1
  • スバック博物館2

バリ島の田園風景や寺院、スバックは2012年に「バリ州の文化的景観 : トリヒタカラナ (神と人と自然の調和) の哲学を表現したスバック・システム」としてユネスコの世界文化遺産に登録されました。タバナン地区にはスバック博物館があり、伝統農具など農村文化について展示しています。

  • スバック博物館3
  • スバック博物館4

スバック博物館に展示されていた、美しい稲の女神・デウィスリーの像です。

加速する観光化

  • 観光化1
  • 観光化2

バリ島の田んぼは約8万ヘクタールですが、毎年5%減少しているとも言われています。ホテルやレストラン、商業施設に転換し、働き手もそちらに流れます。

イ・ニョマン・クドゥスさん

農業機械への関心もあるそうです。イ・ニョマン・クドゥスさんご自身も、「前日に届いた」とおっしゃる農業機械のカタログを興味深く見ておられました。バリ島の田んぼにも、変化の兆しはあるようです。ただ、変わらない思いもあります。

水に神が宿る島

スバックの結束力の秘密は、「水」に「神」が宿るという思いを中心とした宗教との一体化にあります。灌漑施設の要所や田んぼには、必ず寺があります。スバックのメンバーは祭りの仲間でもあります。祭りの楽しさ、癒しの共有はスバックの結束力を強めています。

  • 寺院1
  • 寺院2

水源地には水の神を祀る寺院があり、僧が取り仕切っています。タマン・アユン寺院は掘割の水に囲まれ、その水は田んぼに流れ込み、稲作を支えています。

  • ティルタ・ウンプル寺院1
  • ティルタ・ウンプル寺院2

インドラ神が大地を杖で突き、聖なる水が湧き出したと伝えられるティルタ・ウンプル寺院は、地元の方の沐浴場です。その場所とは別に、地元の方が洗濯をしたり、お風呂がわりに身体を洗うスペースもあります。右の写真の手前のオープンスペースが男性用で、奥の壁に囲まれたスペースが女性用です。

  • 聖水と米1
  • 聖水と米2

ティルタ・ウンプル寺院で沐浴をする前に、聖水と米が授けられます。米は顔につけます。神が愛する美しい花を手に頭上で合掌し、祈ります。

  • 供え物1
  • 供え物2

人々は田んぼの寺に祈り、屋敷寺に祈り、井戸に祈ります。日常生活が、神々と祈りとともにあります。道にも、事故がないようにと供え物をします。

祭り

村の寺でも祭りが行われます。常にどこかからガムラン音楽の調べが聞こえてくるのは、あちらこちらで祭りを行っているためです。遠くから聞こえてくるシンコペーションに、不思議なやすらぎを感じます。

1970年代、灌漑施設の整備を進めながら、インドネシア政府はバリ島のスバックに着目して水利組織を整備し、2008年に米の再自給を達成しました。その後、天候不順等の理由により、再び米の輸入を再開することになりますが、スバックの力はいまも生きているはずです。

バリ島のスバックには米の貯蔵や貸借、生産設備の共有、共同資金の調達などの機能もあります。水利組織から、さらに経済組織への発展も期待されています。スバックの社会、文化、宗教における多面的機能はこれからもバリ島の稲作文化の中心となるでしょう。そして、スバックを支えるのは、人々の思いです。

バリスタイル

バリスタイル1

バリスタイルという言葉があります。寝室、キッチン、トイレなどが別棟になっているのもバリスタイルです。この屋根の飾り物は沖縄のシーサーや鬼瓦のような魔除けなのですかとお聞きしましたら、そうではないそうです。名前はノロロンだそうですが、役割はありません。なぜこのようにしているのかの答えが「バリスタイル」です。

この竹製の笠を赤く塗ってあるのも、バリスタイルです。屋根の色に合わせているそうです。様式美や伝統の遵守といったものを含むと思われるバリスタイルという言葉。イ・ワヤン・パニャースさんが笑顔で、「それはバリスタイルだからですよ」と答えてくれたときに、それ以上の質問は不必要に思われました。神と自然と調和する田んぼもまた、バリスタイルなのでしょう。 バリ島ではいまスマートフォンやタブレット端末が普及しつつあり、観光地のホテルやレストランには無料Wi-Fiスポットが多数あります。情報化社会が急速に進展する可能性があります。

バリスタイル2
バリスタイル3

米作りは神への祈りと結びつき、農家の生活の土台となっています。

  • バリスタイル4
  • バリスタイル5
  • バリスタイル6
  • バリスタイル7

中庭では三世代が集まって、常に語り合っています。

バリスタイルがこの中庭で受け継がれていくのなら、そして神と自然と調和する米作りがバリスタイルであるのなら、どのような変化が訪れても、稲穂の美しい海は、この島に変わらず在り続けると思われます。

取材・文責:くぼたのたんぼ管理人

協力:I wayan badung (アスティ★バリ)

中島寧々 (アスティ★バリ)

200年の伝統を誇るスペイン・バレンシアの田んぼ